ツェルマットからサンモリッツまでは、グレッチャー・エクスプレス(氷河特急)を利用した。「7つの谷、291の橋、91のトンネルを抜けてスイスアルプスを横断する」という謳い文句の列車旅だ。
前半は、フィスプ駅からローヌ川の源流に向かって東に走る。新フルカトンネルを抜けて、しばらく進むと東西南北から道の集まる要衝アンデルマットだ。ここから列車は一気に高度を稼ぎ、オーバーアルプ峠(2033メートル)を超え、ディセンティスに着く。ディセンティスまではマッターホルン・ゴッタルド鉄道の路線、ディセンティスからはレーティッシュ鉄道の路線となる。
中盤はディセンティスからスタート。約5000年の歴史を誇りスイス最古の町ともいわれるクールまでの区間、今度はライン川の流れに沿って東に進む。ライン川は全長1320キロメートル。スイス、フランス、ドイツを抜けて、最後はオランダのロッテルダムで北海に注ぐが、源流はアルプスにある。
後半はクールから。クールで方向転換し、これまでの最後尾車両が先頭車両となり、サンモリッツに向かって南下していく。特にトゥージスからサンモリッツ間のアルブラ線は、サンモリッツからイタリアのティラーノまでを結ぶベルニナ線と合わせ、2008年にユネスコ世界遺産に認定された。有名なランドヴァッサー橋もアルブラ線の一部だ。
終着駅のサンモリッツまで、8時間の列車旅は少し長かったが、スイスアルプスの谷あいを横断することで、スイスという国の南半分を見て感じることができた。