三条通と御幸町通の交差点に1928ビルという古くて目立つビルがある。文字通り1928年に建設され、1999年までは毎日新聞社京都支局として使われていた。このビルを設計したのが「関西近代建築の父」と言われた武田五一氏。建築業界2018.12にある彼の経歴は次の通り。
明治5(1872)年、広島県に生まれた。父は書画に造詣が深く、武田は幼少の頃からその薫陶を受けたという。晩年までポケットにスケッチブックを忍ばせていた彼のドローイングに関する素質の原点が、ここにうかがわれる。
明治30(1897)年に東京帝国大学工科大学造家学科を卒業した武田はそのまま大学院に進学。2年後には退学するが、在籍中に妻木頼黄や伊東忠太といった建築界の大家を補助し、製図監督としての彼の実力が世に知られ始めた。
その後武田は官命によって渡欧。アール・ヌーヴォーやゼツェッションといった西欧最新の様式に触れた。帰朝後は京都高等工芸学校(現・京都工芸繊維大学)教授として十余年を過ごし、更に京都帝国大学(現・京都大学)建築学科創設にも尽力。
自身も大正9(1920)年から定年まで教授を務め、多くの後進を育てた。
武田氏の設計した主な作品を年代順に並べてみた。
- 京都府立図書館(1909年)
- 同志社女子大ジェームズ館(1914年)
- 五龍閣(1921年)
- 京都大学百周年時計台記念館(1925年)
- 島津製作所本社:現在はフォーチュンガーデン京都(1927年)
- 1928ビル(1928年)
- 京都大学人文科学研究所附属東アジア人文情報学研究センター(1930年)
- 同志社女子大学栄光館(1932年)
- 関西電力京都支社(1937年)
一度は前を通ったことがある建物ばかりだ。永く残ってほしい。